「みなし輸出」の管理強化

2021-06-07

経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案についての新聞記事を読みました。
政府が今月中旬にも閣議決定するとのことですが、
外為法上の「みなし輸出」の管理強化が含まれていると報道されています。

▼ みなし輸出とは?
日本国内で武器など軍事にも転用できる高度な民間の先端技術を居住者として滞在している
留学生や研究者などに技術をたれ流さないように管理強化をするとのことです。

▼居住者とは?
現行制度では、入国から6か月が経過した外国人は、日本人と同じ「居住者」として扱われ、
滞在6か月超の外国人に対する技術の提供は許可不要となっています。
この6か月規定が「技術流出の抜け穴」のため、今回この規制強化が検討されています。

すべての滞在している留学生や研究者などを対象に許可申請を義務付けるとのこと。
さらに「居住者」であっても外国の政府や法人から強い影響を受けていると判断される場合も含んだ
コンプライアンス管理になるとの報道もあります。

▼そもそも技術とは?
日本の輸出コンプライアンス管理は国際的な安全保障の観点から、
リスト規制とキャッチオール規制の2つの側面からダブルチェックされています。

リスト規制において、貨物そのもののスペック判定と役務(技術)の判定が求められます。
法律用語で技術輸出のことを「役務の輸出」と言います。  
 
対象となる判定すべき技術:
・製造過程の前段階で必要な設計の技術
・製造工程で必要な技術
・貨物を使用するために必要な技術
これらの技術を居住者が非居住者に技術の開示を行うこと=技術の輸出となります。

▼グレーゾーンも多いので慎重な輸出コンプライアンスが必要
軍事転用もできる先端技術のことを英語では、デュアルユース・テクノロジーと 言いますが、
判定範囲がひろく、グレーゾーンも多いので慎重な輸出コンプライアンスが必要となります。

石原慎太郎の著書「やや暴力的に」(文藝春秋刊)の中に興味を引くくだりがあります。
2000年頃、米政府が日本政府に対し輸出コンプライアンスを求めてきたことが書かれています。 
抜粋引用してみましょう。 

「日本では日常の用途のために使われている技術に、実は軍事目的に転用すれば極めて有効なものがある」
「2000年頃にSONYが発売した子供用ゲーム機器に搭載されているマイクロチップの機能が当時としては世界最高の128ビットあった」 
「当時のアメリカの宇宙船の搭載機器に使われていたチップの容量は大方が32ビットないし64ビットでしたから連中は腰を抜かしました」
「能天気な日本人にそれをそのまま北朝鮮や中国に輸出されたらかなわないということで、当時の政府に要望というか、秘密裏に禁止の命令を携えて押しつけてきました」

自分が輸出している商品は軍事用途とは関係ないと思いがちです。
意外と輸出コンプライアンスの対象であるケースが多く、
輸出する際には必ずコンプライアンスチェックをするようにしましょう。 

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